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Webサイトの制作を依頼しようとしたら、見積書に『請負契約』や『準委任契約』という見慣れない言葉が……。これって、一体何が違うの?
そんな疑問を抱え、契約書に印を押すのをためらってしまう担当者様は少なくありません。「完成品に対してお金を払うのか?」「作業した時間に対して払うのか?」この違いを曖昧にしたまま進めてしまうと、後々「思っていたものと違う」「追加費用が想定外にかかった」といったトラブルの原因になってしまいます。
実は、どちらの契約が優れているというわけではありません。大切なのは、貴社がこれから進めるプロジェクトに、どちらの契約形態がフィットしているかを見極めることです。
例えば、ゴールが明確な「新規サイト立ち上げ」なのか、走りながら改善していく「サイト運用」なのかによって、選ぶべき正解は変わります。
本記事では、Webサイト制作の現場でよく使われる2つの契約形態について、メリット・デメリットを専門用語を抑えてわかりやすく解説します。
契約の基本を正しく理解し、Web制作会社と対等で、安心できるパートナーシップを築くための第一歩としてお役立てください。
Webサイト制作と一口に言っても、その内容はプロジェクトによってさまざまです。まずは、ご自身が検討されている依頼が、以下のどちらに近いかイメージしてみてください。
「パンフレット代わりの会社サイトを作りたい」「5ページ構成の採用サイトを立ち上げたい」といったケースです。 ゴール(完成図)がはっきりしており、設計図通りにカッチリと作り上げることが目的となります。
「サイト公開後も毎月データを分析して改善したい」「SNSと連携して常にコンテンツを更新し続けたい」あるいは「中身が複雑で、作りながら仕様を固めていきたい」といったケースです。 こちらは「一度作って終わり」ではなく、専門スタッフの「知識や技術」を継続的に借りることが目的となります。
上記のような「頼み方の違い」に合わせて、法律上のルール(契約形態)も大きく2つのスタイルに分かれています。
・「完成品」にお金を払う ⇒ 【請負契約】
・「専門家の作業」にお金を払う ⇒ 【準委任契約】
これから、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。この違いを知るだけで、「どちらで契約するのが自分たちにとって得なのか」が判断できるようになります。
Webサイト制作の現場で最も一般的なのが、この「請負(うけおい)契約」です。
これは、一言でいえば「約束した期限までに、指定された成果物を完成させて納品すること」を約束する契約です。クライアント(発注者)は、納品されたWebサイトという「結果」に対して対価を支払います。
・完成の義務がある: 制作会社は、サイトが完成するまで業務を遂行する義務を負います。
・契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任): 納品後にプログラムのバグや重大な欠陥が見つかった場合、一定期間内であれば無償で修正を求めることができます。
・報酬は「結果」に対して: 制作にどれだけ時間がかかったかに関わらず、あらかじめ合意した見積金額を支払うのが基本です。
最大の利点は、「いつまでに、何が、いくらで手に入るか」が明確なことです。「新規でホームページを立ち上げたい」「この機能が付いたサイトを作りたい」といった、ゴールがはっきりしているプロジェクトに最適で、社内の予算承認もスムーズに進みます。
「設計図通りの完成」を約束する契約であるため、制作の途中で「やっぱりデザインを根本から変えたい」「予定になかった機能を追加したい」といった大幅な変更を希望する場合、別途「追加費用」が発生することがほとんどです。
[注意点] 請負契約では、「何をもって完成とするか(要件定義)」を最初にしっかり決めておくことが、トラブルを防ぐ最大のポイントとなります。
「完成」を約束する請負契約に対し、準委任契約は「専門家として誠実に、一定の業務を行うこと」を約束する契約です。
Web制作においては、特定のサイトを完成させて終わりではなく、「サイトの改善案を出し続ける」「不具合がないか見守る」「仕様が決まっていない開発を一緒に進める」といった、継続的なサポートや柔軟な対応が必要なシーンで選ばれます。
<完成の義務はない>
特定の成果物の完成を保証するものではなく、善意を持って「業務を遂行すること」が義務となります。
<善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)>
「プロとして、細心の注意を払って真面目に働きます」という責任を負います。
<報酬は「作業」に対して>
稼働した時間や、月単位の契約期間に対して費用が発生するのが一般的です。
最大の利点は、状況に合わせてやるべきことを柔軟に変えられる点です。「サイト公開後にユーザーの反応を見てボタン配置を変えたい」「最新のトレンドに合わせてページを追加したい」といった場合でも、契約期間内であれば追加の見積もりを待たずにスピーディーに動くことができます。
「何をどこまでやれば終わり」というゴールが契約上は設定されないため、だらだらと契約が続いてしまい、最終的なコストが当初の想定を上回ってしまうリスクがあります。
[注意点] 準委任契約では、「今月は何を優先して進めるか」というコミュニケーションを制作会社と密に取ることが、成功の鍵となります。
これまでの内容を整理し、Web制作における主要な項目で比較しました。自社のプロジェクトがどちらの性質に近いか、照らし合わせてみてください。
| 比較項目 | 請負契約(成果物重視) | 準委任契約(プロセス重視) |
|---|---|---|
| 契約の目的 | Webサイトを完成させること | 専門的な業務を行うこと |
| 報酬の対象 | 完成した成果物(サイト)に対して支払う | 稼働した時間・契約期間に対して支払う |
| 完成義務 | あり(納品して終了) | なし(善管注意義務のみ) |
| 不具合の修正 |
一定期間内であれば無償対応 (契約不適合責任) |
原則として有償対応 (作業として扱われる) |
| 仕様の変更 | 難しい(追加見積もりが必要) | 柔軟に対応可能(稼働内で調整) |
| 向いているケース |
新規サイト制作 サイトリニューアル |
サイト保守・運用 継続的な改善・SNS運用 |
「予算をカッチリ決め、まずは形を作りたい」なら ⇒ 【請負契約】
社内承認が通りやすく、プロジェクトの終わりが明確です。まずはしっかりとしたサイトを立ち上げたい場合に最適です。
「公開後の反響を見ながら、どんどん改善したい」なら ⇒ 【準委任契約】
Webサイトは「作ってからが本番」です。ABテストを繰り返したり、常に最新情報を更新したりと、制作会社を「外部のWeb担当部署」として活用したい場合に非常に効果的です。
「請負」か「準委任」かが決まっても、契約書の細かい中身を曖昧にしているとトラブルの種になります。特にWeb制作で揉めやすいポイントを3つに絞って解説します。
トラブルの多くは「やってくれると思っていたのに、やってくれなかった」という認識のズレから生まれます。
| チェック項目 |
請負契約 (完成を約束する場合) |
準委任契約 (稼働を約束する場合) |
|---|---|---|
| 業務の範囲 |
成果物の内容を詳細にリスト化 ・ページ数、サイトマップ ・実装する機能一覧 ・対応ブラウザやデバイスの範囲 |
役割と稼働のルールを明文化 ・月の想定稼働時間(または工数) ・担当する業務範囲(運用・改善・保守など) |
| 納品の定義 |
「何をもって完成か」を明確に定義 ・納品物の形態(ソースコード、画像素材など) ・検収(チェック)の期間と完了条件 |
「どのように報告するか」を事前に定義 ・定例会議の頻度と実施方法 ・作業レポートや報告書の提出有無 |
| 変更への対応 |
追加費用の基準を明確に ・仕様変更時の再見積もりルール ・契約不適合責任(バグ修正)の期間 |
柔軟な調整ルールを事前に共有 ・稼働時間の過不足時の調整方法 ・優先順位の変更プロセスの確認 |
請負契約において、いつまでも「完成」と認められない状態が続くのは、発注者・制作者双方にとってストレスです。 「納品から〇日以内に確認し、連絡がなければ検収合格(完成)とする」といった期限を設定するのが一般的です。誰が最終決定権を持つのか、社内の確認フローをあらかじめ整理しておきましょう。
意外と見落としがちなのが、「完成したサイトの所有権や著作権は誰のものか?」という点です。 制作費を支払っても、契約書に「著作権は制作会社に帰属する」と書かれている場合、勝手に他社で改修したり、素材を流用したりすることが制限される場合があります。将来的に自社で自由に運用したい場合は、「支払い完了時に著作権を譲渡する」という一文があるか確認しましょう。
Webサイト制作の契約において、大切なのは「どちらが正しいか」ではなく、「どちらが貴社のビジネスの成功を加速させるか」という視点です。
クラビズでは、お客様の現在の課題や目指すべきゴールを丁寧にお伺いし、最も透明性が高く、リスクの少ない契約形態をご提案しています。
「自分たちのケースでは、どう契約するのがベストなの?」と迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。契約の知識も、制作の技術も、すべては貴社のWebサイトを価値あるものにするために活用させていただきます。