2026
02.10
WEB

Webサイト制作の「準委任契約」と「請負契約」の違いとは?トラブルを避けるための基礎知識

Webサイトの制作を依頼しようと見積書を開いたら、「請負契約」「準委任契約」という見慣れない言葉が並んでいた——。「完成したサイトにお金を払うの?」「それとも、作業した時間に払うの?」と、契約書に印を押す手が止まってしまったご担当者様も多いのではないでしょうか。

この違いを曖昧にしたまま進めてしまうと、「やってくれると思っていた作業がオプション扱いだった」「追加費用が想定外にふくらんだ」といったトラブルの火種になりかねません。

とはいえ、どちらの契約が優れている、という話ではありません。大切なのは、これから進めるプロジェクトに「どちらの契約形態がフィットするか」を見極めることです。ゴールがはっきりした新規サイトの立ち上げなのか、公開後も走りながら改善していく運用なのかで、選ぶべき正解は変わります。

本記事では、Web制作の現場でよく使われる2つの契約形態「請負(うけおい)」と「準委任(じゅんいにん)」の違いを、専門用語をかみ砕きながらわかりやすく解説します。さらに、2020年の民法改正で加わった「成果完成型」や、混同されやすい「派遣」「偽装請負」との違い、契約前に必ず確認したいポイントまで一気に整理します。

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そもそも「請負」も「準委任」も“業務委託”の一種|まず全体像を整理

細かい違いに入る前に、大きな地図を持っておきましょう。実は「請負契約」と「準委任契約」は、どちらも「業務委託契約」という大きなくくりの中にある2つのタイプです。会社の外に仕事をお願いする契約は、法律上ほとんどがこの2つのどちらかに整理されます。

つまり「業務委託でお願いします」というだけでは、実は中身が決まっていません。「完成品に責任を持ってもらうのか」「専門家の作業を借りるのか」——ここを決めるのが、請負か準委任かという選択なのです。

Web制作の「頼み方」は大きく2タイプ

まずは、ご自身が検討している依頼が、次のどちらに近いかイメージしてみてください。

依頼のタイプ 内容のイメージ 主な目的
「決まったもの」を作ってもらう
新規制作・リニューアル
会社案内サイト、5ページ構成の採用サイトなど。ゴールとなる完成図がはっきりしており、設計図どおりにカッチリ作り上げる依頼です。 明確な成果物を完成させること
「一緒に育てていく・動かしていく」
運用・改善・システム開発
公開後のデータ分析と改善、SNS連携での継続更新、作りながら仕様を固めたい開発など。専門スタッフの知識や技術を継続的に借りる依頼です。 継続的に改善・運用して成果につなげること

「完成品に払う」か「作業に払う」か

この頼み方の違いに、契約のルール(契約形態)がそのまま対応しています。

  • 「完成品」にお金を払う ⇒ 請負契約
  • 「専門家の作業」にお金を払う ⇒ 準委任契約

この一点を押さえるだけで、「自分たちはどちらで契約すると得なのか」を判断する軸ができます。それぞれの中身を詳しく見ていきましょう。

「請負契約」とは? ─ ゴール(完成物)に責任を持つ契約

Web制作の現場でもっとも一般的なのが、この請負契約です。ひとことで言えば、「約束した期限までに、決められた成果物を完成させて納品する」ことを約束する契約です。発注者は、納品されたWebサイトという“結果”に対して対価を支払います。

身近なたとえなら、注文住宅やオーダースーツに近いイメージです。「この設計・仕様で1棟(1着)仕上げてください」とお願いし、完成品を受け取って代金を払う——この関係が請負契約です。

請負契約の3つの特徴

  • 完成の義務がある:制作会社は、サイトが完成するまで業務を遂行する義務を負います。
  • 契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任):納品後にプログラムのバグや重大な欠陥が見つかった場合、一定期間内であれば無償で修正を求めることができます。
  • 報酬は「結果」に対して:制作にどれだけ時間がかかったかに関わらず、あらかじめ合意した見積金額を支払うのが基本です。

※「契約不適合責任」は、2020年の民法改正で「瑕疵(かし)担保責任」から名称・内容が見直された制度です。納品物が契約の内容に合っていないときの、制作会社側の責任を指します。

メリット:予算が確定し、完成が保証される

最大の利点は、「いつまでに、何が、いくらで手に入るか」が明確なことです。ゴールがはっきりしたプロジェクトに最適で、社内の予算承認もスムーズに進みます。

  • 総額が事前に確定するので、稟議や予算組みがしやすい
  • 「完成」が義務なので、納品の保証がある
  • 新規サイトの立ち上げ・リニューアルなど、終わりが見えるプロジェクトに向いている

デメリット:途中の大きな仕様変更には弱い

「設計図どおりの完成」を約束する契約であるため、制作の途中で「やっぱりデザインを根本から変えたい」「予定になかった機能を追加したい」といった大幅な変更を希望する場合、別途「追加費用」が発生することがほとんどです。

だからこそ請負契約では、「何をもって完成とするか(要件定義)」を最初にしっかり固めておくことが、トラブルを防ぐ最大のポイントになります。なお、制作費用全体の考え方についてはホームページ制作の費用相場の記事もあわせてご覧ください。

「準委任契約」とは? ─ プロセス(業務の遂行)に責任を持つ契約

「完成」を約束する請負契約に対し、準委任契約は「専門家として誠実に、一定の業務を行う」ことを約束する契約です。特定のサイトを完成させて終わり、ではなく、「改善案を出し続ける」「不具合がないか見守る」「仕様が固まっていない開発を一緒に進める」といった、継続的なサポートや柔軟な対応が必要なシーンで選ばれます。

たとえるなら、顧問やコーチに近い関係です。「結果を1つ納品して終わり」ではなく、「専門家として伴走してもらい、その稼働に対してお金を払う」というイメージです。

準委任契約の3つの特徴

  • 完成の義務はない:特定の成果物の完成を保証するものではなく、誠実に「業務を遂行すること」が義務となります。
  • 善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ):「プロとして、細心の注意を払って真面目に職務を行います」という責任を負います。
  • 報酬は「作業」に対して:稼働した時間や、月単位の契約期間に対して費用が発生するのが一般的です。

実は2タイプある|「履行割合型」と「成果完成型」

意外と知られていませんが、準委任契約には2つのタイプがあります。2020年4月に施行された改正民法で、この2類型がはっきりと定義されました。

  • 履行割合型:稼働した時間・作業量に応じて報酬が発生する、従来からの一般的な準委任です。「月◯時間の運用契約」などが典型例です。
  • 成果完成型:一定の成果物の引渡しと同時に報酬を請求できるタイプで、改正で新たに加わりました。

「成果物にお金を払うなら、請負と同じでは?」と思われるかもしれません。しかし成果完成型には、請負のような“完成(達成)義務”がありません。受注側が善管注意義務を尽くして業務を行っていれば、たとえ成果物が求める水準に達していなくても、ただちに責任を問われるわけではない——という点が、請負との大きな違いです。「成果物もきちんと納品してほしいが、請負ほどがっちり縛りたくはない」というケースで活用されます。

メリット:変化に強く、柔軟に動ける

最大の利点は、状況に合わせてやるべきことを柔軟に変えられる点です。「サイト公開後にユーザーの反応を見てボタン配置を変えたい」「最新のトレンドに合わせてページを追加したい」といった場合でも、契約期間内であれば追加の見積もりを待たずにスピーディーに動くことができます。

  • その月ごとに優先順位を組み替えられる
  • 公開後の改善やABテストを回しやすい
  • 仕様が固まりきっていない開発を、走りながら進められる

デメリット:ゴールが見えにくく、コストが膨らむことも

「何をどこまでやれば終わり」というゴールが契約上は設定されないため、だらだらと契約が続いてしまい、最終的なコストが当初の想定を上回ってしまうリスクがあります。

だからこそ準委任契約では、「今月は何を優先して進めるか」というコミュニケーションを制作会社と密に取ることが、成功の鍵となります。

【比較表】ひと目でわかる「請負」と「準委任」の違い

ここまでの内容を整理し、Web制作における主要な項目で比較しました。自社のプロジェクトがどちらの性質に近いか、照らし合わせてみてください。

「請負」と「準委任」はここが違う請負契約(完成にお金)「完成」を約束する報酬は成果物に対して不具合は一定期間無償で修正準委任契約(作業にお金)「業務の遂行」を約束する報酬は時間・期間に対して仕様変更に柔軟に対応
▲ 「請負」と「準委任」の違い
比較項目 請負契約(成果物重視) 準委任契約(プロセス重視)
契約の目的 Webサイトを完成させること 専門的な業務を行うこと
報酬の対象 完成した成果物(サイト)に対して支払う 稼働した時間・契約期間に対して支払う
完成義務 あり(納品して終了) なし(善管注意義務のみ)
不具合の修正 一定期間内であれば無償対応
(契約不適合責任)
原則として有償対応
(作業として扱われる)
仕様の変更 難しい(追加見積もりが必要) 柔軟に対応可能(稼働内で調整)
向いているケース 新規サイト制作/サイトリニューアル サイト保守・運用/継続的な改善・SNS運用

どちらを選ぶべき?判断のポイント

「予算をカッチリ決め、まずは形を作りたい」なら ⇒ 請負契約
社内承認が通りやすく、プロジェクトの終わりが明確です。まずはしっかりとしたサイトを立ち上げたい場合に最適です。

「公開後の反響を見ながら、どんどん改善したい」なら ⇒ 準委任契約
Webサイトは「作ってからが本番」です。ABテストを繰り返したり、常に最新情報を更新したりと、制作会社を「外部のWeb担当部署」として活用したい場合に非常に効果的です。

契約形態を選ぶ4ステップ目的を整理ゴール確認形態を選ぶ条件を確認
▲ 契約形態を選ぶ4ステップ

混同しやすい「派遣」「偽装請負」との違いにも注意

請負・準委任とあわせてよく比較されるのが「労働者派遣(派遣契約)」です。Web制作・システム開発の発注では、ここを取り違えると法律上のリスクにつながることがあるため、要点だけ押さえておきましょう。

派遣契約との違いは「指揮命令」を誰がするか

最大の違いは、作業者に指示を出す(指揮命令する)のが誰か、という点です。

  • 請負・準委任:指揮命令するのは、受注した制作会社です。発注者は成果物や業務内容を依頼しますが、担当者一人ひとりに直接指示は出しません。
  • 派遣:指揮命令するのは派遣先(発注者)です。派遣スタッフは、発注者の指示のもとで働きます。

つまり「自社の担当者として、こちらの指示で動いてほしい」なら派遣、「専門家チームに任せて、成果や業務そのものを委ねたい」なら請負・準委任、というのが大枠の整理です。

「偽装請負」に要注意

請負・準委任の契約なのに、実態としては発注者が制作会社のスタッフへ直接こまかく指示を出している——こうした状態は「偽装請負」と呼ばれ、法律上問題になります。

契約形態と実際の働き方がズレないよう、「誰が指示を出すのか」を契約の段階で明確にしておくことが大切です。信頼できる制作会社であれば、この点もきちんと整理したうえで契約を結びます。

トラブルを避けるために!契約前に確認すべき4つのポイント

「請負」か「準委任」かが決まっても、契約書の細かい中身を曖昧にしているとトラブルの種になります。特にWeb制作で揉めやすいポイントを4つに絞って解説します。

契約前に確認したい4つのポイント1業務の範囲どこまでやるかを文書化2納品・検収完成の条件と期限を定義3変更対応追加費用の基準を明確に4著作権の帰属譲渡の一文があるか確認
▲ 契約前に確認したい4つのポイント

① 業務の「範囲」と「定義」を明確にする

トラブルの多くは「やってくれると思っていたのに、やってくれなかった」という認識のズレから生まれます。下表のように、契約形態ごとに決めておくべき項目を整理しておきましょう。

チェック項目 請負契約
(完成を約束する場合)
準委任契約
(稼働を約束する場合)
業務の範囲 成果物の内容を詳細にリスト化(ページ数・サイトマップ/実装する機能一覧/対応ブラウザ・デバイスの範囲) 役割と稼働のルールを明文化(月の想定稼働時間または工数/担当する業務範囲=運用・改善・保守など)
納品・報告の定義 「何をもって完成か」を明確に定義(納品物の形態=ソースコード・画像素材など/検収の期間と完了条件) 「どのように報告するか」を事前に定義(定例会議の頻度と方法/作業レポート・報告書の提出有無)
変更への対応 追加費用の基準を明確に(仕様変更時の再見積もりルール/契約不適合責任=バグ修正の期間) 柔軟な調整ルールを事前に共有(稼働時間の過不足が出たときの調整方法/優先順位の変更プロセス)

② 「検収(チェック)」のルールを決めておく

請負契約において、いつまでも「完成」と認められない状態が続くのは、発注者・制作者の双方にとってストレスです。「納品から◯日以内に確認し、連絡がなければ検収合格(完成)とする」といった期限を設定するのが一般的です。誰が最終決定権を持つのか、社内の確認フローもあらかじめ整理しておきましょう。

③ 変更・追加対応のルールを共有する

請負なら「仕様変更時の再見積もりルール」と「契約不適合責任(バグ修正)の期間」を、準委任なら「稼働時間に過不足が出たときの調整方法」と「優先順位を変えるときの進め方」を、事前に握っておくと安心です。後から「これは追加費用?」と慌てずに済みます。

④ 知的財産権(著作権)の帰属先を確認する

意外と見落としがちなのが、「完成したサイトの所有権や著作権は誰のものか?」という点です。制作費を支払っても、契約書に「著作権は制作会社に帰属する」と書かれている場合、勝手に他社で改修したり、素材を流用したりすることが制限される場合があります。将来的に自社で自由に運用したい場合は、「支払い完了時に著作権を譲渡する」という一文があるかを確認しましょう。

【ケース別】あなたのプロジェクトはどっち?

最後に、よくあるケースで「どちらの契約が向いているか」を整理します。

新規サイト制作・リニューアルなら ⇒ 請負契約

ゴールと予算が明確で、まずはしっかりとした“形”を立ち上げたいケースです。完成の保証があり、社内承認も通しやすいため、新規制作やリニューアルとの相性が良い契約です。クラビズのWebサイト制作実績でも、こうした新規・リニューアル案件を数多く手がけています。

運用・改善・継続サポートなら ⇒ 準委任契約

公開後にデータを見て改善を重ねたい、SNSやコンテンツを継続更新したい、仕様を固めながら開発を進めたい——こうしたケースには準委任契約が向いています。「成果物もきちんと納品してほしい」という場合は、前述の成果完成型の準委任も選択肢になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 請負契約と準委任契約の、いちばん大きな違いは何ですか?
A.「完成」を約束するかどうかです。請負契約は成果物の完成に責任を持ち、その結果に対して報酬を払います。準委任契約は業務の遂行に責任を持ち、稼働した時間・期間に対して報酬を払います。

Q. 準委任契約だと、成果物は受け取れないのですか?
A. 受け取れないわけではありません。2020年の民法改正で「成果完成型」の準委任が定義され、成果物の引渡しと同時に報酬を払う形も選べます。ただし、請負のような完成(達成)義務はない点が違います。

Q. 「業務委託契約」とは何が違うのですか?
A. 業務委託契約は大きなくくりで、法律上はその中身が「請負」か「準委任」のいずれかになります。「業務委託」だけでは責任の範囲が決まらないため、どちらの性質の契約なのかを明確にすることが大切です。

Q. Webサイトの保守・運用は、どちらの契約が向いていますか?
A. 月単位で柔軟に対応する保守・運用は、準委任契約が向いているケースが多いです。一方、新規制作やリニューアルのように完成図がはっきりしているものは、請負契約が一般的です。

まとめ:迷ったら「プロジェクトの目的」を整理しよう

Webサイト制作の契約において、大切なのは「どちらが正しいか」ではなく、「どちらが貴社のビジネスの成功を加速させるか」という視点です。ゴールが固定された新規制作なら請負、走りながら改善していく運用なら準委任——まずはプロジェクトの目的を整理することが、最初の一歩になります。

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