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「そろそろ自社もホームページをリニューアルしないと」「新しい事業のためにWebサイトを立ち上げよう」。そう考えたとき、いきなりデザインや機能の話から始めていませんか?実は、それが成果の出ないホームページが生まれる一番の原因かもしれません。
最近では、多くの企業がSNSや動画コンテンツと連携した複雑なWebサイトを展開していますが、その一方で「コストをかけたのに問い合わせが全く来ない」「誰に何を伝えたいのか分からないサイトになってしまった」という声も後を絶ちません。こうした失敗の根本原因は、ホームページ制作の「スタート地点」にあります。
それは、「誰に、何のために、情報を届けるのか?」という目的とターゲット設定が曖昧なまま進めてしまうことです。
この記事では、数々のWebサイト制作に携わってきたプロの視点から、成果を出すための土台となる「目的」と「ターゲット」を明確にするための3つのステップを、具体的なケーススタディを交えて徹底解説します。
何のためにホームページを作るのか?そのゴールが明確でなければ、航海図のない船と同じで、どこにも辿り着けません。利益のためか、採用のためか、あるいはブランド認知のためか。その意義をはっきりさせましょう。
ホームページの目的は、企業の課題や事業フェーズによって様々です。まずは自社がどの目的に当てはまるか考えてみましょう。
売上・利益の拡大:
・商品やサービスの購入(ECサイト)
・問い合わせや資料請求の件数を増やす(サービスサイト)
・店舗への来店予約を促進する(店舗サイト)
採用活動の強化:
・企業の魅力や文化を伝え、エントリー数を増やす(採用サイト)
・ミスマッチを防ぎ、質の高い応募者を獲得する
認知度の向上・ブランディング:
・企業の理念やビジョンを発信する(コーポレートサイト)
・専門的な情報(ブログ等)を提供し、業界での第一人者としての地位を確立する
・見込み客との継続的な接点を作る
もし目的が「なんとなくあった方がいいから」という状態だと、以下のようなデメリットが生じます。
情報の詰め込みすぎ: 「あれも載せたい、これも伝えたい」となり、ユーザーにとって何が重要か分からない、まとまりのないサイトになります。結果、訪問者はすぐに離脱してしまいます(離脱率の増加)。
デザインの方向性がブレる: 目的が決まらないと、デザインの方向性も定まりません。「高級感」を出すべきか、「親しみやすさ」を重視するべきか。判断基準がないため、担当者の好みだけで進んでしまい、ちぐはぐな印象を与えます。
効果測定ができない: ゴールがなければ、何をもって「成功」とするか評価できません。かけた費用と時間に見合った成果が出ているのか分からず、次の改善策も打てなくなります。
目的を具体化したら、その達成度を測るための指標、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定します。これにより、ホームページの成果を客観的な数値で評価できるようになります。
目的 | KPIの例 |
---|---|
売上拡大 | ・コンバージョン(CV)数・率 ・問い合わせ件数 ・資料請求数 ・平均顧客単価 |
採用強化 | ・エントリー数 ・採用サイト経由の応募率 ・採用単価(CPA) |
認知度効果 | ・Webサイトへのアクセス数(セッション数) ・新規ユーザーの割合 ・平均ページ滞在時間 ・指名検索(会社名での検索)数 |
「誰に届けたいか」を具体化できれば、メッセージもデザインも、心に深く刺さるものになります。「すべての人」に向けたメッセージは、結局誰の心にも響きません。
ターゲットを絞るとは、見込み客を切り捨てることではありません。最も情報が届いてほしい、象徴的なユーザー像である「ペルソナ」を具体的に作り上げることです。ペルソナを設定することで、チーム内での認識が統一され、「この人ならどう感じるだろう?」という視点で一貫した意思決定が可能になります。
洗い出す属性の例:
・基本情報: 年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、家族構成
・ライフスタイル: 趣味、価値観、休日の過ごし方
・情報収集の行動パターン: よく見るSNS、情報源(Webメディア、雑誌など)、検索時に使うキーワード
・抱えている課題や悩み: なぜ情報を探しているのか、どんなことに困っているのか
例えば、高性能な掃除機を売りたい場合、ターゲットを「30代の主婦」とするだけでは不十分です。
【ペルソナ作成例】
名前: 佐藤 みき
年齢: 34歳
職業: パートタイマー(週3日勤務)、2児の母(5歳と3歳)
悩み: 「子供がアレルギー気味なので、ハウスダストが気になる」「毎日掃除機をかけるが、時間がなくて大変」「コードレス掃除機は持っているが、吸引力が物足りない」
情報収集: Instagramで暮らしのアイデアを探す。ママ友との情報交換や、比較サイトのレビューを重視する。
ここまで具体化すると、「吸引力の高さを動画で見せよう」「お手入れの簡単さをアピールしよう」「”時短”や”アレルギー対策”という言葉が響きそうだ」といった、具体的なコンテンツやデザインのアイデアが次々と生まれてきます。
中心となるペルソナ(メインターゲット)を1〜2名設定し、次に重要な層をサブターゲットとして設定すると、より戦略に幅が生まれます。例えば、前述の掃除機の例なら、メインは「佐藤みきさん」ですが、サブターゲットとして「ペットを飼っている単身の30代女性」や「掃除好きな60代の父親」などを設定することが考えられます。これにより、コンテンツの優先順位をつけやすくなります。
目的が決まり、ターゲットが具体化したら、その二つがしっかりと結びついているかを確認します。目的に合ったターゲットにアプローチできていなければ、戦略の方向性がブレてしまいます。
以下の項目を自問自答し、矛盾がないか確認しましょう。
目的とニーズは一致しているか?
(例)目的が「高級腕時計の販売」なのに、ターゲットが「節約志向の20代学生」になっていないか?
ターゲットはその目的を達成してくれる層か?
(例)目的が「BtoB製品の導入」なのに、ターゲットが現場担当者のみで、決済権を持つ部長クラスが考慮されていない、ということはないか?
メッセージはターゲットに響く言葉か?
(例)若者向け製品なのに、専門用語ばかりの堅苦しい文章になっていないか?
設定したペルソナが、「いつ、どこで、どのデバイスで」ホームページを見るかを想定することも重要です。
BtoB企業の決済者向けサイト: 平日の日中、会社のPCでじっくり閲覧する可能性が高い。→ 詳細なデータやグラフを用いた、PCでの閲覧に最適化されたレイアウトが有効。
飲食店のサイト: 移動中の電車内や、お店を探している歩行中にスマートフォンで見る可能性が高い。→ 現在地からのアクセスや、タップしやすい電話番号・予約ボタンを配置した、モバイルファーストな設計が必須。
ホームページは公開して終わりではありません。設定した「目的」と「ターゲット」が正しかったかを検証し、改善を続ける必要があります。
A/Bテスト: ボタンの色やキャッチコピーなどを2パターン用意し、どちらがより高い成果(クリック率など)を出すかテストする手法。ターゲットに響く表現をデータに基づいて見つけ出せます。
ヒートマップ分析: ユーザーがページのどこをよく見ているか、どこで離脱しているかを色で可視化するツール。ターゲットが意図した情報に注目しているかを確認できます。
具体的にどう整理すればいいか、3つの業種を例に見ていきましょう。
地方のイタリアンレストラン | 若者向けアパレルECサイト | BtoBの部品メーカー | |
---|---|---|---|
目的 | 新規顧客の獲得とディナータイムの予約数増加 | 新商品の認知度向上とECサイトでの直接購入促進 | 既存顧客への深耕営業と、新規の問い合わせ獲得 |
メインターゲット (ペルソナ) | 30代の子供連れファミリー層(ママ)。週末の外食先を探しており、子供向けメニューや座席の広さを重視。 | 18〜24歳のファッション感度の高い大学生。Instagramでトレンドを追い、インフルエンサーの投稿を参考に購入を決める。 | 40代の購買部門の担当者。品質と安定供給、コストを重視。Webサイトで技術情報や導入事例を比較検討する。 |
具体的な施策 | ・スマホで見やすいレイアウト ・キッズメニューや個室の写真を掲載 ・お得なファミリー向けクーポンを提示 ・簡単なオンライン予約フォームを設置 | ・Instagramとの連携強化 ・インフルエンサーによる着用レビュー記事 ・ショート動画での商品紹介 ・初回購入者限定の割引キャンペーン | ・詳細な製品スペックシートのダウンロード機能 ・顧客の課題解決に繋がった「導入事例」コンテンツの充実 ・技術的な問い合わせに対応する専門フォームの設置 |
このように、目的とターゲットを明確にすることで、打つべき施策が具体的に見えてきます。
ホームページ制作を成功させる鍵は、制作に着手する前の「目的」と「ターゲット」の明確化にあります。
STEP1: なぜ作るのか?(目的設定)
売上、採用、認知度向上など、具体的なゴールを決める。
STEP2: 誰に届けるのか?(ターゲット設定)
象徴的な顧客像(ペルソナ)を詳細に設定し、メッセージを鋭くする。
STEP3: 目的とターゲットは合っているか?(整合性確認)
両者のズレをなくし、利用シーンを想定した設計を行う。
この土台がしっかりしていれば、デザインやコンテンツで迷走することなく、成果につながるホームページ制作を進めることができます。
もし、「自社だけでの目的・ターゲット設定に不安がある」「プロの視点からアドバイスが欲しい」とお考えでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。クラビズでは、お客様のビジネスを深く理解する企画段階のヒアリングを最も重視し、成果を出すための一貫した戦略設計から制作、運用までをワンストップでサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。